コラム
カウンセリングの抵抗感について
相談をお受けしているときに「カウンセリングを受けるのは嫌」「家族に勧めたけどカウンセリングには行きたくないと言っている」というお話を聞くことがあります。
私自身も長年カウンセリングを受けているのですが、やはり初めて受けるときや、自分の問題と向き合わなければならない時には、色々考えてしまって行きたくない気分になりました。
今回はカウンセリングを受けてみたいけど、何となく不安や抵抗感があるという方のために、カウンセリングに対する不安とその対処法について主に心理面から考えてみたいと思います。
〈余計傷つけられるのではないかという不安〉
カウンセリングは、自分の問題や弱いところを語ることが多いので、普段着ている鎧を脱いで弱点をさらすような怖さがあるのは当然と言えます。
さらにカウンセラーが問題を理解してくれなかったり、ひどいことを言う人だったらどうしよう。努力していないことや、うまくできないことを攻められたりしたらどうしようといった考えが出てくることもあるかもしれません。
このような不安は、自分に足りないとわかっていることを指摘されるとつらいという、自分を守りたいという当然の気持ちから生まれると言えます。カウンセラーに、親や先生など「アドバイスをする人」のイメージが重なりやすいことも、不安を強くする一因かもしれません。
〈問題や悩みに向き合う怖さ〉
漠然と頭の中で考えていることを言葉にする、話すことで現実味が増してしまう、向き合うことが怖くなるということがあると思います。
モヤモヤ一人で考えていることもつらいけれど、話してしまうとそれが現実として直面させられてしまうのが怖い。
相談したいと思っているのに矛盾しているようですが、話したいけど話したくないという葛藤は、それだけご自身の問題を大きいものととらえている、向き合うことが困難な道のりなのだと思っていることの裏返しなのではないかと思います。
〈期待が裏切られる不安〉
抵抗感が大きいほど、それを乗り越えるために期待も大きくなりがちなのかもしれません。
これだけ嫌なんだから、頑張って行ったらいいことがあるはず、というような。
カウンセリングに行けば魔法のように苦しいことが減るのではないか、苦しい日々がついに終わるのではないかと思うことも無理からぬことです。
〈抵抗感を減らすためのヒント〉
もしこういうことが不安でしたら、そのような不安があることを率直にカウンセラーに伝えてみていただけたら良いと思います。
不安や葛藤があることも、抵抗感があることも、そのこと自体が大事なカウンセリングのテーマになります。
何を話して、何を話さないか、どこまでどんな風に話すか、その決定権は相談に来られた方にあります。
疑ったり警戒したり、身構えたりしながら、恐る恐る、相談にいらしていただけたらと思います。
実際のところ、人間関係の、生のやりとりですので、誤解があったり、言葉足らずだったりして、モヤモヤした気分が残ることもあります。その場で言えなくて引きずることもあるでしょう。カウンセラーに幻滅したり、がっかりすることもあるかもしれません。
魔法のように事態が良くなることは少ないです。
ですが、話すことで視点が変わったり、考えが整理されたり、自分の気持ちに気づいたり、これからの道筋が見えたりして楽になることは多いです。
何よりも自分のことについて、嫌なことも含めて時間いっぱいゆっくり話すことは、カウンセリングでしかできない作業ではないかと思います。
カウンセリングとは地道で地味だけど、ここでしかできないダイナミックな作業だとつくづく思います。
勇気を出して相談に来られた方のお力になれるように、心を込めてお話をお伺いしたいと思っています。
カウンセリングに対するネガティブな思いも含めて、どうぞ、ご相談下さい。